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         第4回 過労死防止学会 分科会

     増加する客室乗務員の在職死亡、過労の実態と提言

                            発表者 坂口真澄

 

  • 日本の客室乗務員の実態

 

【大手A社における4つの事例(昨年4ヶ月間の報告例)】

事例1.  羽田-サンフランシスコ線で 乗務中、客室乗務員が体調不良に陥り酸素吸入を行った。
事例2.  成田-ダラス線の出発前に、客室乗務員の体調不良により人員交替を行った。

事例3. ロンドン-羽田線でロンドン出発前、客室乗務員が胸が苦しいと身体不良を訴えフライトを降りた。

事例4. アジア路線、羽田‐北京線に乗務中の客室乗務員が体調不良になり、北京到着後病院に搬送された。

その他、 羽田のロッカールームで倒れて救急車で搬送された、乗務中に体調不良の為、着陸前まで横になったままで業務を行うことができなかった、等の報告もあります。さらに睡眠障害による休業、疲れによるじん麻疹の発症なども報告されています。

 

【メンタル疾患の増加】

大手B社では、2015年のデータから、私病による休職やメンタル疾患が小中高の教員より多いという実態が明らかになりました。客室乗務員の病気休職の割合が教員の4倍、精神疾患による休職者の割合では、客室乗務員は教員の2倍以上の休職率となっています。(教員は文科省データより)

客室乗務員に鬱病が多い理由として、時差による睡眠障害の他、長時間労働や不規則勤務等による過労や感情労働(自分の感情を押さえた対応が求められる業務)により精神的負担が高い為と考えられます。このB社では、過去4年間(2014~2017年)で10名の客室乗務員が在職中に死亡するという痛ましい実態があります。死亡理由は、くも膜下出血や ガンなどで、20代~30代の在職死亡者も多くなっています。

 

【労働環境の特徴】

機内の環境➡低酸素分圧、低気圧、低湿度、時差、振動、傾斜、騒音、宇宙放射線など

身体的ストレス➡不規則、早朝深夜勤務、長時間勤務、狭いスペースでの立ち仕事、重量物など

心理的ストレス➡感情労働(乗客、上司、同僚への気遣い)、査定による心理的負担など

企業的風土➡スケジュールを選べず、休養時間、休養日が少ないにもかかわらず休みにくい

 

  • 休憩の設定がなく長時間勤務でもほとんど休めない、違法状態の勤務

 

客室乗務員の職場では、国内線では1日3~4便を乗務し、アジア路線では香港やマニラを1日で往復するなど、10~12時間の長時間勤務になる事も多い状況です。しかし、大手、LCC(格安航空会社)問わず、長時間勤務でも「休憩時間」の設定がなく実態上もほとんど取れません。

飲食の時間もきちんと確保されていない為、フライトの合間の駐機中に、機内清掃をしているホコリの中で5~10分でお弁当を食べる、又は、駐機中に機内清掃の業務がある場合は、上空で立ったまま食べるか、食べられず持ち帰る事もあります。

労働基準法第34条施行規則32条では、国内線、又は近距離国際線では、労働時間6時間超える場合45分、8時間を超える場合1時間の休憩付与が義務付けられています。しかし、どの航空会社も、この労基法を守っていない実態があります。

 

【事例1】  成田➡札幌➡成田➡札幌➡成田

出社時間12:10分~退社時間22:40分、勤務時間は10時間30分時間

この間、休憩がなく、約10分間程の食事時間のみです。

 

【事例2】  羽田➡香港➡羽田

出社時間19:45分~退社時間 翌日07:50分、勤務時間は12時間05時間

この間の休憩は、往復の合計で20~30分程度です

 

 

  • 外国航空会社の客室乗務員との労働条件比較

 

では、欧米との比較ではどうでしょうか?

  • 欧州2泊4日から帰国後の休日数は、外国籍航空会社は4日以上ですが、日本の航空会社ではわずか2日間です。これでは時差は取れません。

  • 乗務時間の年間制限は、EU基準では年間 900時間までですが、日本は年間1080時間まで飛べる大手航空会社もあり、この場合EUより2ヵ月も多く乗務できる制限となっています。(この900時間、1080時間とは飛行機が動いている時間=飛行時間です。労働時間はその前後の所定作業を含み、国内線でこの約2倍の時間に相当します)

  • 欧米では、疲労が蓄積した場合休む事が義務付けられており、有給休暇とは別にSick Leave(病気休暇)が権利としてあります。日本は大手航空会社でもSick Leave制度がなく、病気の時は有給を振り替えます。

 

  • スケジュール作成の希望制度について、米国では、スケジュールを勤続順に選べます。また、欧米では、だれとでも勤務パターンの交換ができます。日本では 会社が一人一人のスケジュールを100%決め、個々で選べる制度は全くありません。

  • 日本では、笑顔や応対をチェックし賃金や昇格に結びつく評価制度がありますが、欧米にはありません。日本のような評価制度は人権侵害とされています。

  • 男女比率では、欧米では男性客室乗務員が3割以上ですが、日本では99%が女性客室乗務員となっています。

  • 日本では、欧米で当たり前になっている国家ライセンスが付与されてない為、保安要員の位置づけよりサービス要員としての面が重視されがちです。

  • 平均勤続年数は、日本の大手航空会社であるB社(約7000名在籍)の場合、わずか6年半。毎年、大量採用・大量退職を繰り返しますが、米国航空会社の客室乗務員の平均勤続年数は約20年(AFA組合データ)となっています。

 

 

  • 私たちの提言

 

【 勤務の改善 】 

○ 労基法の遵守(休憩時間の付与を)

○ 月間乗務時間制限は、運航乗務員並みの90時間に(客乗職は現行100時間)、年間制限はEU並みの900時間に(客乗職は現行1200時間まで飛べます)

注:この90時間、900時間とは飛行時間であり、労働時間とは違います。

○ 連続する乗務日の短縮(現行6日間を4日間に)

○ 長距離フライト後の十分な休養(現行2日間を欧米並みの4日間に)

○ 深夜乗務明けの休日の確保(現行は、アジアの深夜便乗務明けの翌日に休日がないまま国内線を飛ぶこともある。

 

【 ライセンス制度、その他 】

〇 欧米並みのライセンスの付与

〇 欧米並みの男女比率に(現行は99%女性)

○  欧米並みの sick leaveの新設

○ 欧米にはない「人事・フライト評価賃金制度」の廃止

○  ハラスメント対処教育の定期的実施、及び人権侵害・不当労働行為の一掃

 

 

拝読頂き有り難うございました。ご質問等ありましたらCCP事務局までお願い致します。

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